目次
1、障害者グループホームの総合的な責任を担っている『サービス管理責任者』
障害者グループホームで働く人の中で『サビ管』と言われる人々がいます。
『サビ管』とは『サービス管理責任者』の通称になり、障害者グループホームだけでなく障害福祉施設の多くで配属されている職種の1つです。
サービス管理責任者とは障害者グループホームだけでなく、他の障害福祉サービスにおいて配置することが定められています。
サービス管理責任者の仕事は、簡潔に言うと障害福祉施設においてトータルサポートを行うことです。
サービス管理責任者は施設のサービス内容の質を維持するためのまとめ役にあたり、施設に入居したり利用する方に対して個別の支援計画を作成し、その人にとって最適なサポートやケアは何かを示していくことです。
しかし、実際には他にもサービス管理責任者が行うべき役割があります。
①支援に対してのアセスメントや調査
先ほど解説したように、サービス管理責任者の大きな仕事として利用者に対しての支援内容の決定や調査を行うことが挙げられます。
サービス管理責任者は利用者の障害の状態や困難なことを判断し、個別の支援計画の原案を作成した上で、職員で話し合い支援内容に間違いはないか、支援方法が適正かを会議しより密な計画書を作成します。
個別支援計画が適切に提供出来ているか、また、その人にとって支援計画は最善であるかというモニタリングを行い、より良い支援やケアを行けるように計画内容を見直しや修正を行います。
利用者が快適に障害者グループホームで過ごすことが出来るように働きかけるだけでなく、その都度職員が適正な支援を行えているかという判断も行っていくのがサービス管理責任者の大きな役割になります。
②職員のスキルアップやサポート
個別の支援計画だけでなく、サービス管理責任者は人材育成も重要な仕事です。
障害者グループホームは人と関わる職種になりますので、障害に対しての正しい知識や介助方法といった技術面の指導や教育を行っていくことも求められます。
利用者に対してだけでなく職員に対してもサポートを行っていかなければなりませんので、職員や施設全体を見渡すことが出来る広い視野と豊富な経験が必要になります。
サービス管理責任者は、職員のスキルアップの場を提供したり、内部研修を行ったりと利用者により良いサポートを行えるように職員の育成も行っていくことが求められます。
③関連機関との連携を図る
障害者グループホームでは、自立した生活を送るだけでなく、地域との交流や社会進出を行う目的もあるので、自治体などの他の機関との連携を図っていくことも大切です。
サービス管理責任者は、医療機関や自治体、障害者の就労移行支援事業所などとしっかりと連携を図りながら、障害を抱えている人の社会進出や地域交流が行えるように配慮していきます。
他の機関と包括的な体制を構築していくことで、総合的なサポートを行えるようになり利用者の細かいニーズに応えることが出来るようになります。
このように、サービス管理責任者は施設の利用者のみへの支援やサポートを行うだけでなく、地域との繋がりを構築したり、職員のスキルを向上していくことでより良い施設へしていくことが求められます。
2、サービス管理責任者は直接処遇職員や管理人との兼務が可能な場合も
基本的に無資格で働くことが出来る世話人に対して、サービス管理責任者の場合には有資格者になります。
そのため他の職種と兼務することが出来る場合と、出来ない場合があります。
世話人や生活支援員は直接処遇職員と言い、この直接処遇職員とサービス管理責任者は施設によって兼務が出来ない場合がありますので注意が必要です。
サービス管理責任者が直接処遇職員や管理人と兼務出来るかどうかは以下になります。
【グループホーム】
主な施設:障害者グループホーム等
少人数で共同を行いながら自立した生活を送ることを目的としているグループホーム(共同生活援助)でもサービス管理責任者の配置が必要となっています。
基本的にサービス管理責任者は兼務ではなく、専任としてグループホームに配置されることが定められていますが、業務を行う時間をきちんと確保できた上に、本来の業務の妨げにならないのではれば、管理人や直接処遇職員との兼務をすることが可能です。
【日中活動系施設】
主な施設:療養介護事業所、就労移行支援事業所、自立訓練事業所、就労継続支援事業所等
日中の活動を行い自立を目指したり、仕事を行う日中活動系の施設では、サービス管理責任者は常勤で専任であることが定められています。
直接処遇職員との兼務は出来ず、管理人との兼務は可能となっていますので、本来の業務を遂行することが求められます。
しかし、例外としてサービス管理責任者が非常勤の場合と、直接処遇職員の手伝い程度のサポートであれば行うことが出来ます。
直接処遇職員との兼務は出来ませんので、当然常勤の職員の数としてサービス管理責任者を数えることは出来ませんが、事業所が20人未満の少人数であれば常勤職員として数えることが可能となります。
利用者の人数によって、常勤職員として数えられるかが異なりますので注意しましょう。
【多機能型事業所】
主な施設:生活介護事業所と就労継続支援事業所というように2つの事業所が一緒になっている施設
多機能型事業所の場合だと、利用者の人数によってサービス管理責任者が兼務出来るかが異なってきます。
事業所の利用者が60人以下であれば管理人とサービス管理責任者が兼務することが可能になります。
直接処遇職員との兼務になると利用者の中に重度の障害を持っている子どもの対応を行っている事業所で、かつ利用者の人数が20人以下であれば直接処遇職員との兼務を行うことが出来ます。
多機能型事業所の場合には、サービス管理責任者と管理人、直接処遇職員それぞれの兼務に対する条件が異なりますので、兼務を行いたい場合には事前にしっかりと事業所の内容や利用者の人数などを確認しておく必要があります。
3、多くの分野で活躍している『サービス管理責任者』
障害者グループホームだけで活躍していると思われがちなサービス管理責任者ですが、実は多くの分野で活躍しています。
サービス管理責任者は介護だけでなく、自立訓練などの施設でも配置が義務付けられており、いわば障害者福祉サービスでのスペシャリストと言えます。
サービス管理責任者が活躍しているサービス内容としては以下になります。
療養介護 |
病院といった医療機関に長期間入院している時に |
生活介護 |
障害者の中でも常に介護が必要となる方が利用する障害者支援施設など入浴や排泄などの介護を行う |
自立訓練(機能訓練) |
身体障害者や難病患者に対してリハビリや生活上で |
自立訓練(生活訓練) |
知的障害者や精神障害者の方に対して、リハビリや生活上で困難に感じる面でのサポートや相談といった支援を行う。障害を抱えている人の自宅でも行うことが出来る |
就労移行支援 |
障害を抱えていると一般企業や事業所への就労が困難な場合がある。そういった時に、就労や生産活動といった機会を提供し、就労を行うために必要となる知識やスキルの向上を目指し訓練を行う。 |
(参考:介護のお仕事研究所)
このように、サービス管理責任者は多くの障害者福祉サービス施設で活躍しており、中でも管理職や指導者というように重要な役割を担う働きがあります。
組織の中で中心的存在として活躍するサービス管理責任者は、障害者グループホームでも配置が義務付けられており、現在も活躍しています。
多くの障害者福祉サービス施設で活躍しているサービス管理責任者ですが、児童を対象にした児童発達支援施設や放課後デイサービスといった障害者の通所施設ではサービス管理責任者ではなく、児童発達支援管理者の配置になります。
(*1)
就労移行支援A型の対象となる方
①就労移行支援施設を利用していたものの、一般企業や事業所と雇用契約を結ぶことが出来なかった方
②特別支援学校を卒業したが、一般企業や事業所と雇用契約を結ぶことが出来なかった方
③就労経験があるものの、現在は雇用契約を結んでいない方
就労移行支援B型の対象となる方
①就労経験があるものの年齢や身体的な理由で雇用契約を結ぶことが困難となった方
②障害基礎年金1級を受給されている方
③50歳に達している方
④①~③に該当せず、就労移行支援事業者によって就労面の課題が明白になり把握されている方
4、実務経験は必須!サービス管理責任者には実務経験はどれくらいいるの?
サービス管理責任者は誰でも簡単になることが出来る職種ではなく、実務経験と研修をクリアしなければサービス管理責任者になることが出来ません。
きちんと定められた施設で働き経験を養った上で『実務経験証明書』を作成してもらい、自治体へ提出します。
『実務経験証明書』を取得することに加えて、必要な研修を修了することで初めてサービス管理責任者に就くことが出来ます。
では、必要な実務経験と、研修とはどのような内容になっているのでしょうか?
【必要となる実務経験】
実務経験とは実際に指定された施設で働き経験を積むことで得られる経験値のことで、実務経験が多いほど知識や技能を習得していると示すことが出来ます。
経験値としてのバロメーターを表すのに実務経験は非常に大きなウェイトを占めており、即戦力となるということを証明することが出来ます。。
サービス管理責任者になるために必要となる実務経験は、どの経験を積んだかで満たされる年数が異なりますので、注意が必要です。
必要となる実務経験は以下になりますので、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
【第1号】
実務経験:5年以上
①地域生活支援事業、障害児相談支援事業、身体障害者相談支援事業、知的障害者相談支援事業、そしてその他にあるこれらの事業所の従事者
②相談支援業務
身体障害者や精神障碍者を持った方が、日常生活を送る上で何等かの困難が生じてしまった場合に、日常生活に対しての自立を目指すための助言や支援を行っていく業務が相談支援業務です。
職種としては相談支援栓も人やソーシャルワーカー、支援相談員などがあたります。
・児童相談所、身体障害者構成相談所、知的障害者構成相談所、精神障害者社会復帰施設、福祉事務所、発達障害者支援センター、その他のこれらに準ずるる施設の従事者や準ずる者
③障害者支援施設、老人福祉施設、精神保健福祉センター、救護施設及び更生施設、介護老人保健氏悦、地域包括支援センター、その他のこれらに準ずる施設の従事者や準ずる者
④障害者職業センター、障害者雇用支援センター、障害者就業・生活支援センター、その他のこれらに準ずるる施設の従事者や準ずる者
⑤特別支援学校、その他のこれらに準ずる機関の従業員やこれに準ずる者
⑥保険医療機関において、相談支援事業に従事する者で、『社会福祉主事資格者』『訪問介護員2級以上に相当する研修の修了者』『第4号に掲げる国家資格を有する者』『①~⑤の施設に従事した期間が1年以上である者』
⑦その他のこれらの業務に準ずると都道府県知事が認めた業務に従事する者
【第2号】
実務経験:8年以上
①直接支援業務
直接支援業務とは2種類あり、少し内容に違いがあります。
1つ目は、日常生活を送ることに対して何らかの支障や困難があったり、身体、または精神上の障害を抱えた方への入浴や排泄といった介護を行います。
また、障害を持った方への介護の面で、必要な指導を行ったり助言を行います。
2つ目は、日常生活における基本的な動作の指導や知識や技能の獲得、生活を円滑に送るためのスキルを獲得するための訓練のサポートを行います。
介護士や指導員、生活支援員がこちらを担当することになります。
・障害者支援施設、障害者入所施設、老人福祉施設、介護老人保健施設、障害福祉サービス事業、老人居宅介護等事業、保険医療機関、保険薬局、訪問介護事業所、医療法に規定する療養病床において直接支援の業務に従事する者
・特例子会社、重度障害者多数雇用事業といった障害者雇用事業所で就業支援の業務に従事した方
・特別支援学校で特別支援教育における職業教育の業務に従事した方
・その他の業務に準ずると都道府県知事が認めた業務に従事した方
【第3号】
実務経験:5年以上
①有資格者
【第2号】の直接支援業務に従事している以下の資格を所持している方
・社会福祉主事任用資格を有している方
・相談支援の業務に関する基礎的な知識や技能を得る研修である介護職員初任者研修に相当する研修を修了した方
・保育士(第2号に掲載している以外の保育施設の場合には実務経験として日数の算入は出来ない)
・児童指導員任用資格者
・精神障害者社会復帰指導員任用資格者
【第4号】
必要な実務経験:1年以上
①国家資格を所持し業務に従事している方
・医師、薬剤師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士を含む栄養士、精神保健福祉士
②【第1号】から【第3号】までの実務経験を通算して3年以上獲得している方
必要な実務経験が最も短い第4号ですが、第4号に関しては①と②どちらも該当しなければなりませんので注意が必要です。
(引用・参考: 厚生労働省告示
兵庫県サービス管理責任者など研修、実務経験について
ジョブメドレー「サービス管理責任者」)
このように、単に実務経験といっても所有している資格や、従事していた事業所によって必要となる実務経験の年数は異なります。
実務経験の1年以上とは、業務に従事した期間が1年以上であり、日数にして180日以上でなければなりません。
ですので、1年間対象となる事業所や施設で業務に従事したとしても、実際に業務した日数が180日未満であれば1年以上にはなりません。
ですので、5年以上の実務経験が必要となると、『業務に従事した期間が5年以上、かつ日数は900日以上』ということになります。
しかし、1年以上の実務経験が180日以上といっても1日あたりの勤務時間は計算されませんので1日として数えられます。
サービス管理責任者になるためには、それぞれの資格や従事する業務内容によって異なるものの必要な実務経験を獲得し、なおかつ必要な研修を修了しなければなりません。
実務経験だけをクリアしていても、サービス管理責任者として就労することは出来ませんので注意しましょう。
5、サービス管理責任者に必要な研修が改訂!新しく設置された研修も
では、サービス管理責任者になるために必要な研修とは何があるのでしょうか?
サービス管理責任者になるためには、先ほど紹介したように必ず研修を受けなければなりません。
以前は『相談支援従事者初任研修』と『サービス管理責任者等研修』の講義や演習を受けることで修了となっていたのですが、2019年にサービス管理責任者の実務経験や研修について改訂があったため、現在は『相談支援従事者初任者研修』と『サービス管理責任者等研修』の講義や演習が基礎研修となり、新に実践研修と更新研修が設置されることになりました。
ですので、現在サービス管理責任者として従事されている方も2023年度が終えるまでに更新研修を行わなければなりません。
実際にサービス管理責任者の資格を取得されている方は、実務経験なども個人で異なりますので、どのように更新研修を受けたら良いかを問い合わせして、備えておきましょう。
今回は新しく取得される場合の解説を行いますので、参考にしてください。
サービス管理責任者になるために必要な研修である『相談支援従事者初任者研修』と『サービス管理責任者等研修』の内容としては以下になります。
『相談支援従事者初任者研修』
地域の障害者等の意向に基づく地域生活を実現するために、必要となる保険や医療、福祉、就労、教育といったサービスを利用者に適切な支援や必要な技術を習得します。他にも地域支援やケアマネジメントに関する講義などを中心に講義が行われます。
『サービス管理責任者等研修』
サービス管理責任者等研修では、障害者の日常生活や社会生活を総合的にサポートしていくために、必要な知識や技能を有するサービス管理責任者を養成するための研修になります。
このように、『相談支援従事者初任研修』と『サービス管理責任者等研修』が基礎研修となり、その後相談支援または直接支援業務として過去5年間に2年以上実務経験があった方は、実践研修を受講することが出来、その後、5年毎に更新研修を受けてサービス管理責任者として継続して従事することが出来ます。
更新研修を受けるためには、過去5年間に2年以上のサービス管理責任者としての実務経験があるか、現在サービス管理責任者として従事しているかという条件を満たすことが必要です。
上記のように、福祉に関するサービス全般をプロセスしたりアセスメントを行うサービス管理責任者として働くためには、実務経験に加えて研修をクリアすることが必須になります。
6、まとめ
障害者福祉施設では総合的なまとめ役として活躍するサービス管理責任者。
直接業務をするのではなく、利用者の一人ひとりが適したサポートを受けられているかをアセスメントしたり、施設で働いている方の指導やサポートを行い人材育成を行う等、幅広い知識と経験が必要となります。
サービス管理責任者として業務に従事するためには、実務経験に加えて専門知識や技能を養成する基礎研修と実践研修、そして更新研修を受けることが必要になります。
サービス管理責任者の資格要件は2019年に改訂されており、実務経験の緩和や研修体制の変化がありました。
新しくサービス管理責任者の資格を取得される方は、新体制で問題ありませんが、現在サービス管理責任者として従事されている方は2023年までに更新研修を受けなければならなかったりと変更点がありますので注意が必要です。
自分がどのような研修をいつ受講しなければならないか等は、各自治体へ問い合わせをして確認しておくことが大切です。