障がいがある方の就労サポート、『就労継続支援』。
同じようなサポート制度として『就労移行支援』があります。
言葉は似ていますが、この2つはどう違うのでしょうか?
今回は就労移行支援と就労継続支援の違いについて解説します。
『就労移行支援』と『就労継続支援』の共通点
就労移行支援と就労継続支援は、ともに障害者総合支援法による就労系障害福祉サービスです。
障がいを抱えながらも、働きたいという希望をもつ方の就労を支援するという点が共通しています。
また、福祉サービスのため誰でも利用できるわけではないところも共通点です。
精神障がい、知的障がい、発達障がい、身体障がいなどをもつ方のほか、難病などの障害者総合支援法の対象疾病をもつ方が利用できます。
市町村にサービス利用申請をし、支給決定が行われます。
令和2年3月現在の就労系障害福祉サービスの対象者数は以下のとおりです。
就労移行支援 約3.4万人
就労継続支援A型 約7.2万人
就労継続支援B型 約26.9万人
『引用:厚生労働省(障害者の就労支援対策の状況)』
目的と対象者の違い
『就労移行支援』の目的と対象者、支援内容
就労移行支援は、一般企業などで働くために必要なスキルを身につけたり、求職活動や就職後の相談に応じたりすることを目的としています。
対象者は一般就労を希望し、一般企業などで働くことが可能と見込まれる方です。
65歳未満という年齢制限がありますが、65歳以上の方も要件(※)を満たせば利用可能となります。
※65歳に達する前5年間障害福祉サービスの支給決定を受けていた者で、65歳に達する前日において就労移行支援の支給決定を受けていた者は当該サービスについて引き続き利用することが可能
『引用:厚生労働省(就労系障害福祉サービスの概要)』
訓練・支援内容は以下のとおりです。
・職場体験などの機会の提供、その他就労に必要な知識及び能力の向上に必要な訓練
・求職活動に関する支援
・適性に応じた職場の開拓
・就職後の職場への定着のために必要な相談
就労移行支援は2年間という利用期間の制限があります。
必要性が認められた場合に限り、最大1年間の更新が可能です。
『就労継続支援』の目的と対象者、支援内容
就労継続支援は、障がいがあるために一般企業などで働くことが難しい方に、就労や生産活動の機会を提供したり、一般就労に必要なスキルを身につけるための支援を行ったりすることを目的としています。
対象者は一般企業などに雇用されることが困難な方です。
就労継続支援には就労継続支援A型と就労継続支援B型があり、就労継続支援A型は65歳未満という年齢制限があります。就労移行支援と同様に、65歳以上の方も要件を満たせば利用可能です。
就労継続支援B型は年齢制限がありません。
仕事・訓練内容の例は以下のとおりです。
・パソコンのデータ入力
・袋詰め、部品加工、検品などの内職
・パン、クッキーなどの製造
・農作業
・縫製、刺繍などの手芸
これらはほんの一例で、事業所によってさまざまな活動を通して就労の機会を提供しています。
就労継続支援は利用期間の制限がありません。
賃金の違い
就労移行支援の賃金
就労移行支援は実際に働くのではなく、一般就労のためのトレーニングや相談などの支援を行うサービスであるため賃金は発生しません。
就労継続支援の賃金
就労継続支援は賃金が発生します。
就労継続支援A型は事業所と利用者が雇用契約を結ぶため、給与が支払われます。
最低賃金が保証され、条件を満たせば雇用保険や労災保険の対象となります。
就労継続支援B型は雇用契約を結びません。
そのため工賃しか支払われず、就労継続支援A型より賃金は低くなるケースが多いです。
令和元年度の就労継続支援A型の平均給与は月額78,975円、就労継続支援B型の平均工賃は月額16,369円です。
『引用:厚生労働省(障害者の就労支援対策の状況)』
『就労移行支援』『就労継続支援』からの一般就労
就労移行支援、就労継続支援から一般企業などへ就労する人は毎年増加しており、令和元年には初めて2万人を超えました。
特に就労移行支援での一般就労への移行率は徐々に上昇し、令和元年では利用者の5割以上が一般企業への就職を実現しています。
その一方で就労継続支援からの一般就労への移行率は、横ばいか低下傾向にあります。
『引用:厚生労働省(障害福祉サービスからの就職者について)』
まとめ
就労移行支援と就労継続支援は、どちらも障がいをもつ方の就労をサポートする福祉サービスです。
しかし、それぞれの目的が異なることから、対象者や支援内容、賃金の発生などに違いがあります。
障がいの度合いは人それぞれで、一般就労を目指す方もいれば、まずは就労継続支援の事業所で働く経験をしながら体調を整えていく人もいます。
自分がどのサービスを利用できるか分からなくても、働きたいという希望があれば、一度市町村の窓口に相談してみましょう。