厚生労働省の公式サイトでは「介護保険の区分が要介護3以上の高齢者の場合、半数以上の人が車椅子を利用している」という調査結果が発表されています。今では高齢者の生活を支えていくうえで車椅子は切り離せない存在です。
家政婦(夫)として働くなかでは、車椅子を日常的に使用している高齢者の方を支えなくてはならないこともあるでしょう。
焦って危険な事故を起こさないためにも、どのようなポイントに気を付ければ良いのか具体的にお伝えします。
事前にチェックすること
まずは高齢者の方を車椅子に乗せる前に、車椅子の状態を確認しておきましょう。5つのポイントに分けて考えます。
①ブレーキがしっかりと効くか
②タイヤに空気が入っているか
③前や後ろにスムーズに動くか
④座面や背もたれに不備が無いか(固さ、布のほつれなど)
⑤全体的な歪みや、破損は無いか(ネジの緩みなど)
自転車もそうですがタイヤに空気が入っていないと、地面からの衝撃や振動が体に直撃してしまいます。高齢者の方の体への負担を減らすために必ず確認しましょう。
車椅子の座面や背もたれは固い布でつくられていることが多いです。体の大きさに合ったクッションを間に挟むようにすると、体への負担を減らすことができます。高齢者の方が無理な姿勢にならないようサポートしましょう。
車椅子はずっと座った姿勢でいるため足が冷えやすく、寒い時期はもちろんですが夏でも冷房が効いていると足先から冷えてしまいます。事前にすぐに取り出せる位置にひざ掛けを置いておくと素早く対応できるのでおすすめです。
高齢者の方が車椅子に乗ってから不備がある状態に気づくと、重大な事故に繋がりかねません。ですから目視でさらっと確認するのではなく、触ってみたり実際に動かしてみたりして入念にチェックしましょう。
もしメンテナンスが必要だと判断した場合は、できるだけ早く依頼主やその関係者に伝える必要があります。危険な状態で置いておかないようにしましょう。
使用中に気をつけるポイント
では実際に車椅子を使っているときにはどんなことに気を付ければ良いのでしょうか?車椅子にはメーカーによって様々な種類がありますが、構造は単純です。車椅子にあまり馴染みが無いという方でも、以下のポイントに注意してみてください。
①押し方
車椅子の後ろに立ち両手でハンドクリップをしっかりと握ります。そして高齢者の方に肘掛けを握り、足をフットサポートにのせて貰います。
麻痺などの後遺症があって難しい場合は、麻痺側の手を太ももの上に乗せて貰うなど安全に工夫しましょう。車椅子を動かす前には必ず一度声をかけましょう。そして動かしたい方向に障害物などが無いか確認してから動かします。
②ブレーキのかけ方
後ろに立ったままグリップを片方の手でしっかりと握り、もう片方の手でブレーキをしっかりと固定します。弾みで車椅子が動いてしまわないようにします。転倒事故を防ぐため、車椅子から降りたり乗ったりするときには必ずブレーキをかけるようにしましょう。
③手足の巻き込み防止
乗っている高齢者の方の手足が車椅子に巻き込まれないように注意しましょう。手がひじ掛けから落ちてしまってタイヤに巻き込まれたり、足が足置きから落ちてしまって地面との間に挟まってしまったりする危険もあります。片麻痺などで自立できないという場合は、固定用の福祉用具を使うと便利です。
④移動するときの注意
急発進や急カーブ、急停止は危険なのでしないようにしましょう。できるだけ衝撃を減らすためにバリアフリーに対応しているところや、舗装された道を選んで進むように気をつけましょう。一人で動かしたり介助するのが難しいと感じるときは素直に周りに助けを求めるようにしましょう。
焦らずにしっかりと声をかけながらゆっくり進んでいくことで、高齢者の方に安心して車椅子に乗ってもらえます。
⑤坂や段差の対処
最近ではスロープが用意されている店も多いため、車椅子でゆるやかな坂道を使うというのはよくある場面かもしれません。
上るときには少し体を前に倒すようにしてゆっくりと進むようにします。下るときには後ろ向きになって一歩ずつ下るようにします。急な坂の場合は軽くブレーキをかけながらでも構いません。
段差を上がる場合には、キャスターを上げてからバランスを保ちつつ車椅子を前に進ませてから後輪を押し上げます。下がるときには後ろ向きになって後輪を下ろしてから、キャスターを上げてゆっくりと後ろに引き静かに下ろします。
普段から意識できる心遣い
どうして欲しいのかを依頼主に具体的に聞いてみるのもおすすめです。
人によって丁度良い早さや角度は違いますし、自分では気付かなかったような意外な点で苦痛を感じてしまっているかもしれません。
お互いリラックスしている環境でサポートできるように意識しましょう。
まとめ
車椅子は高齢者の方にとって、生活のなかで行動の幅を広げる手段の1つであり、生きがいに繋がります。外に出て生きがいや楽しみを見つけることで新しいことにも挑戦しよう!という前向きな気持ちになることができます。
そんな想いを家政婦(夫)として上手にサポートできるように、日々努力していきましょう。