命の危険も!食中毒を起こさないために家政婦が注意すべきこととは

命の危険も!食中毒を起こさないために家政婦が注意すべきこととは

家事の中でも1日3回作らなければならないだけでなく、調理器具の片付け、栄養バランスの良い献立の作成、食器の後片付けととにかく炊事は大変です。

また、介護や看護を行っている方であれば、その人に合わせた調理方法を行わなければならず重労働になります。

家政婦(夫)へ依頼することで、1回分の食事であっても全てを任せることが出来るので、お客様の負担を減らすことが出来ます。

しかし、食事を作る際に注意しなければならないのが『食中毒』です。

食中毒は、飲食店だけでなく家庭内でも多く感染が報告されているので、家政婦(夫)が食事の支度の依頼を受けた場合には、食中毒を起こさないように注意が必要です。

では、食中毒の予防とはどのような事をすれば良いのでしょうか?

家政婦(夫)として働く時にはきちんと知識として覚えておきましょう!

食事の支度、調理の依頼は家政婦(夫)の中でも多い

家政婦(夫)への依頼内容で、食事の用意や調理はとても多い内容の1つです。

仕事が忙しいために、食事の用意をしておいて欲しい等といった依頼も多いですが、近年多いのが介護の依頼での食事の用意です。

高齢者の飲み込みやすい形状に合わせて柔らかく煮込んだり、小さくカットしたりと、食事内容にも工夫が必要となり、やはり手間がかかってしまうことが多いので家政婦(夫)への依頼が増加しています。

基本的に食事の支度は介護保険制度を利用して依頼することは可能ですが、あくまでも本人のみで家族の分も食事の支度をして欲しいと考えても利用することは出来ません。

そのため、自費ではありますが、家政婦(夫)へ家族全員分に合わせた食事の準備を依頼される方が多いのです。

介護保険と併用が出来る家政婦(夫)紹介所であれば、介護保険を利用している本人の分は費用を抑えることが出来ますし、ご家族の負担の軽減にも繋がります。

事前にどのような食事内容にするか、硬さや大きさなども詳しく伺い食事の支度をサポートしていきます。

命を落とす危険もある食中毒とは

調理の依頼で最も注意しなければならないことが衛生面です。

消費期限が切れた食品を使ってしまったり、不衛生や汚染された調理器具を使用して調理をしてしまうことで、食中毒に感染してしまう恐れがあります。

食中毒が発生してしまうと、最悪の場合命の危険に及ぶことがありますので、絶対に発生させないことが大切です。

では、そもそも食中毒とは何なのでしょうか?

食中毒とは

夏になると良く耳にする食中毒という言葉。

食中毒は夏に多く発生しているイメージが強いですが、実は1年間を通して発生しており、気を抜きがちな冬場が最も多く発生しています。

食べ物や飲み物に含まれている有毒な物質を摂取してしまうことで、嘔吐、下痢、腹痛、発熱といった症状を引き起こすことを食中毒と言います。

感染力が高く食べ物を食べた時のみならず、感染している方の便などに触れても感染するので注意が必要です。

食中毒には細菌性のものとウィルス性のものが主流になります。

代表的な食中毒

食中毒を引き起こすのは、細菌性とウィルス性以外にも、アニサキスといった寄生虫やフグや貝による自然毒によるものなどがあります。

しかし、通常の調理であれば、フグや貝による食中毒が起こることはまずありません。

では、代表的な食中毒を引き起こすものは何があるのでしょうか?

カンピロバクター

カンピロバクターに汚染された鶏肉を食べたことで、食中毒を引き起こすことが多く、毎年多くの方の感染が報告されています。

カンピロバクターは家畜に多くいる細菌ですが、解体する時に腸管から肉へ移動し汚染されていまいます。

他にも野鳥の糞便などに汚染された湧き水などからも感染しますが、現在食中毒として発生している大部分は鶏肉からになります。

カンピロバクターによる食中毒の多くは数日で回復へ向かいますが、下痢をした後の1週間から3週間後に手指の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難を起こすギランバレー症候群との合併症が起きる場合があります。

感染したらしっかりと医療機関を受診し経過を診てもらうことが大切です。

『潜伏期間』

約2日~7日

『症状』

・吐き気、嘔吐

・腹痛

・下痢

・発熱など

『感染しやすい食品』

・鶏肉

・感染者の糞便

・感染したペットの糞便

ノロウイルス

ノロウイルスは毎年集団感染が報告されているため、メディアでも多く取り上げられている食中毒ですので、知っている方も多いでしょう。

ノロウイルスは冬場に流行する食中毒で、感染力が強い食中毒の1つです。

ノロウイルスはカキなどの二枚貝から感染することが多く、感染者の体内で一気に増殖します。

激しい下痢、腹痛にみまわれますが、数日で治ることが多いです。

『潜伏期間』

1日~3日

『症状』

・下痢

・吐き気

・腹痛

・比較的軽い発熱

『感染しやすい食品、感染経路』

・二枚貝(カキ、ハマグリなど)

・感染者の吐しゃ物、糞便

腸炎ビブリオ

魚介類から感染しやすいのが腸炎ビブリオです。

刺身や寿司から感染しやすく、手やまな板につくとそこからも感染します。

塩分が3%程度ある食品内を好みますが、水中で生きていくことは出来ないので、水でしっかりと魚介類を洗うことが大切です。

夏から秋にかけて多く発生する食中毒です。

『潜伏期間』

8時間~24時間

『症状』

・腹痛

・水様下痢

・発熱

・嘔吐

『感染しやすい食品、感染経路』

・刺身、寿司、魚介加工品

・汚染された手や調理器具

ロタウイルス

子どもに多く感染することで知られているロタウイルス。

感染力が非常に強く完全に予防することは難しいとされており、衛生状態が良い先進国でさえ5歳までにほぼ全ての乳幼児が感染するとも言われています。

ウィルス粒子が1~100個程度が体内に入ることで感染が成立するために、日本でも3月あたりに毎年ロタウイルスによる食中毒が流行します。

年間約80万人が感染すると言われているくらい、代表的なウィルス性食中毒です。

『潜伏期間』

2日~4日

『症状』

・水様下痢

・吐き気、嘔吐

・発熱

・腹痛

*合併症として、肝機能異常、急性腎不全、

『感染しやすい食品、感染経路』

・二枚貝(カキ、ハマグリなど)

・感染した人の糞便

・汚染された調理器具

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌による食中毒も毎年感染が報告されていますが、実は黄色ブドウ球菌は人に常在している菌で私たちの手指にも存在しています。

黄色ブドウ球菌による食中毒は、黄色ブドウ球菌による汚染された食品の中で、エンテロトキシンという毒素を発生させますが、このエンテロトキシンが食中毒の症状を引き起こします。

増殖力が強いので、特定の食品を摂取することで感染するのではなく、どの食品の中でも増殖し感染してしまうのが特徴です。

またエンテロトキシンは100℃で30分加熱しても無毒化されないので、完全に予防することは難しくなります。

『潜伏期間』

1時間~3時間

『症状』

・吐き気、嘔吐

・下痢

・腹痛

『感染しやすい食品、感染経路』

・乳製品

・卵製品

・肉製品

・魚肉加工品(ちくわやかまぼこなど)

・生菓子など

・手指の創傷、化膿創

病原性大腸菌(0-157)

食中毒の中でも特に感染すると命の危険が伴うのが病原性大腸菌によるものです。

病原性大腸菌は代表的な菌として0-157がありますが、以前に感染者から死亡例が発生し話題になり世間に認知されるようになりました。

症状としては食中毒の症状と似ていますが非常に重篤で、0-157による食中毒であれば、ベロ毒素という強い毒素が腸管壁を破壊してしまい、鮮血が混じった血便が出てしまったり、溶血性尿毒症や脳症により死亡するケースもあります。

病原性大腸菌は草食動物が保菌しており、その汚染された食肉から人へ感染することがわかっています。

熱に弱く、しっかりと加熱することで予防することが出来ますが、焼き肉など中まで火を通さない調理方法は要注意です。

『潜伏期間』

0-157の場合は3日~9日

その他の病原性大腸菌は5時間~72時間

『症状』

・腹痛

・水様下痢

・出血性下痢

・吐き気、嘔吐

*0-157の場合はその症状も非常に重篤

『感染しやすい食品、感染経路』

・加工食品

・食肉

・井戸水

サルモネラ菌

サルモネラ菌による食中毒は汚染された食肉や卵を食べることで感染してしまいます。

サルモネラ菌は動物の腸内や下水、川など自然界にも多く存在していますが、人やペットといった生活内にも存在しているので注意が必要です。

食べ物からの感染だけでなく、調理した方の手指や調理器具などを介しての二次感染もあります。

『潜伏期間』

6時間~48時間

『症状』

・悪寒

・嘔吐

。腹痛

・下痢

・38度前後の発熱

・血便

『感染しやすい食品、感染経路』

・食肉

・卵

・汚染された手指や調理器具

ボツリヌス菌

河川や動物の腸管、土壌など自然界に広く存在しているボツリヌス菌ですが、非常に強い芽胞を作り毒性も非常に強くなります。

酸素がない場所でも増殖しますので、食肉や野菜などの生鮮食品ではなく、レトルト食品や缶詰などの真空状態の食品から感染しやすいという特徴があります。

ボツリヌス菌による食中毒は、重篤になるケースが多く、最悪の場合死亡するという事例も過去に発生していますので、細心の注意を払うことが重要です。

ボツリヌス菌は熱に弱いのでしっかりと加熱することで感染を予防することが出来ます。

また、はちみつにはボツリヌス菌が含まれている場合があり、1歳未満は乳児ボツリヌス症をおこす危険がありますので絶対に与えてはいけません。

『潜伏期間』

8時間~36時間

『症状』

・吐き気、嘔吐

・便秘

・めまい

・嚥下障害

・脱力感

・倦怠感

・物が2重に見えたりする視力障害

・呼吸困難

・発生困難

*重症化すると呼吸筋麻痺で死亡したり、後遺症が残る場合があります。

『感染しやすい食品、感染経路』

・レトルト食品

・缶詰

・瓶詰

・発酵食品

・真空パック食品(からし蓮根)

・いずし

*乳児ボツリヌス症ははちみつとコーンシロップから感染します

◆食中毒の原因菌一覧

【食中毒予防の3原則】とは?

食中毒は毎年多くの方が感染して辛い思いをしたり、危険な状態になってしまう方がいるため、厚生労働省は食中毒予防の3原則を定めました。

食中毒を予防するために重要な3つのポイントをおさえることで、感染するリスクを下げることが出来ます。

では食中毒予防の3原則とは何なのでしょうか?

つけない

調理を行う中で、最も色々なものを触るのが『手』です。

手についた菌やウィルスが食品に移ったり、食品を触ったことで手についた菌やウィルスが調理器具や食器についてしまう等、手を媒介にして感染が広がってしまいます。

そのため、まずは手につけない、またはついたとしても洗いおとすことが食中毒を予防するためには重要となります。

調理器具からの二次感染も同様で、菌やウィルスがついたとしても洗って広がらないように注意しましょう。

増やさない

菌やウィルスは常温や高温内では一気に増殖してしまいます。

逆に低温で保存していると、菌やウィルスの増殖を抑えることが出来ます。

10度以下であれば、増殖のぺースは穏やかになり、マイナス15度以下になると増殖をストップすることが出来ます。

そのため、必ず食品の保存には冷蔵庫や冷凍庫を利用しましょう。

また、買ってきた食材 などは帰宅後すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れて、出来る限り低い温度を維持するようにしましょう。

やっつける

ほとんどの菌やウィルスは加熱をすることでリスクを減らすことが出来ます。

肉や魚は生ではなく火を中までしっかりと通し、野菜も出来る限り加熱しましょう。

調理器具も同様で、熱湯をかけたり洗剤を使用して殺菌することが大切です。

家政婦(夫)が食中毒を発生させないために注意すべき事5点

食中毒は毎年メディアでも多く取り上げられているために、どうしても飲食店で感染するというイメージが強くなりますが、実際には家庭内での感染が多く毎日食べている食事へ注意を払うことが大切です。

食中毒は一歩間違えば命の危険も高くなりますので、日頃から徹底した衛生管理をしていくことが大切です。

家政婦(夫)の場合、食事の支度の依頼が来た場合には、お客様の希望に沿ったメニューや、調理内容にすることに加えて、食中毒の予防も徹底していかなければなりません。

免疫力、体力がある方だけでなく、高齢者や乳幼児であれば免疫力が低下していたり、体力も少ないので重症化してしまったり、命の危険が生じる可能性もあります。

『食中毒は絶対に起こさない』という意識を常に持って仕事を行うようにしましょう。

では、家政婦(夫)が食中毒を発生しないために注意すべき事を紹介します。

①買い物では消費期限などを必ず確認したり順番を考える

家政婦(夫)のみならず、誰しもが買い物の時には消費期限を確認しますよね。

家政婦(夫)も買い物が必要な場合には、消費期限などを必ず確認すると共に、生鮮食品の場合には痛んでいないか、変色がないか等も合わせて確認するようにしましょう。

また、買い物の順番も重要で、特に肉や魚など食中毒を引き起こしやすいものは最後にかごに入れるようにします。

保冷バックや保冷剤を持参し買い物を終えたら速やかに家へ戻り、すぐに冷蔵庫へ入れるようにしましょう。

買い物でも少しの工夫を行うことで、食中毒のリスクを下げることが出来ます。

また、食材についても必ずお客様から内容等を確認しておき、おかしいと感じるものがあった場合にはすぐに連絡を行いどのようにすれば良いか確認しましょう。

「新しく買いに行って欲しい」「別のもので代用してほしい」「そのメニューはキャンセルしたい」などお客様からの指示を待ちます。

絶対に家政婦(夫)が勝手に判断して、代用品を使ったり、他の食材を使用しないようにしましょう。

②調理の前に材料の最終チェック、調理器具の消毒を

調理に入る前に、材料の最終チェックを行いましょう。

材料を買いに行った場合も、お客様が用意してくれていた場合も、必ず痛んでいないかをチェックします。

◆チェックすべき事

・変色していないか

・匂いがおかしくないか(腐敗臭、刺激臭がないか)

・粘り気が出ていないか

また、手指や調理器具もしっかりと洗い、消毒や熱湯をかけて殺菌をしましょう。

多くの家庭では、きちんと調理器具も洗っていますが、どこで菌やウィルスがついているかはわかりませんので、調理の直前に調理器具の消毒を行うとリスクを下げることが出来ます。

また、使用するタオルやふきんも清潔なものを使用するようにしましょう。

③調理は食べる直前に!加熱は必ず行うこと

自宅で作ったものをタッパーで持ってきて、お客様にふるまうことは絶対にしてはいけません。

食事の支度の依頼があった場合には、必ず当日、食事の直前に調理するようにします。

自宅で作ったものは、調理してから時間が経過してしまい、雑菌が繁殖している恐れがあります。

たくさん作ったから…といって、自宅から持ってきたものをお客様に提供しないようにしましょう。

また、メニューに関しても、家政婦(夫)へ依頼があった場合には、メニュー内に生ものがないようにしましょう。

家政婦(夫)紹介所でもガイドラインが定められているので、その指示に従いますが、基本的には刺身や寿司、ローストビーフといった非加熱の物は食中毒を引き起こしやすくなりますのでメニューに入れない方がベターです。

肉や魚は中心部を75℃以上1分間以上加熱することが目安になります。

ハンバーグなど中の温度がわかりにくい場合には、温度計を使用したり、切って中の色を確認しましょう。

もしも家族の分も用意した場合には、荒熱を取ったあとにタッパーに入れて冷蔵庫に保存しましょう。

常温で保存はしないようにし、必ず食事前に加熱することが重要です。

④使用した調理器具はきれいに洗い消毒を行う

必ず肉や魚を切る時に使用したまな板や包丁で野菜などを切る時には、洗剤できれいに洗って熱湯をかけたりして消毒をしてから使用しましょう。

肉や魚についた菌やウィルスが、野菜に二次感染してしまう可能性があります。

必ず別の調理器具を使うか、洗ってから使うようにしましょう。

また、調理に使った後はすぐに洗い放置しないようにしましょう。

ふきんは煮沸消毒や薬剤による消毒を行いしっかりと乾かします。

次に使う時にも安全に使用できるように配慮することが大切です。

⑤残った食品や食材は冷蔵庫内に保存しお客様へ伝える

余った食材や、作ったもののまだ食べない料理は、先ほど述べたようにタッパーにいれて荒熱を取り冷蔵庫内に保存しましょう。

荒熱をとる時も、保冷剤や氷を使用して急激に冷やして行き、常温で長時間放置してはいけません。

常温で2時間置いたものは、食中毒の可能性がありますので、廃棄するようにします。

そうすると食材も無駄になってしまいますし、もったいないから食べるとなってもリスクが高くなり危険です。

必ず保存する時には冷蔵庫内に保管するようにしましょう。

まとめ

健康な方であっても嘔吐や下痢など非常に辛い思いをする食中毒。

高齢者や体力の少ない方、持病がある方が食中毒になってしまうと重症化してしまうだけでなく、後遺症などが残る可能性があります。

依頼を受けた時は、調理を行う前から手指や調理器具の消毒を行ったり、食材の鮮度を落とさないように保存環境を整えて、菌やウィルスの増殖を抑え食中毒を発生させないことが重要です。

家政婦(夫)紹介所のガイドラインでも、生肉などを触る時にはゴム手袋を着用するように決めていたり、消毒薬を持っていかなければならなかったり、エプロンを付けるなど定められていることがありますので、必ず一度確認してから職務を行うようにしましょう。

食中毒は絶対に起こさないようにする、という意識をもって衛生管理を徹底することが大切です。

基礎知識カテゴリの最新記事